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肘の故障と投球フォームとの関係

 ここ数年大リーグでは肘の靭帯断裂によるトミー・ジョンTommy John手術が急増し、トミー・ジョン・シンドロームとも呼ばれています。

 有望な新人投手が次々とトミー・ジョン手術を行い、その影響はついにダルビッシュ、マー君(田中投手)にまで及び衝撃を受けました。その原因はどこにあるのかこの一年間ずっと考えてきました。ようやく、その謎が解けたように思います。

 「怪我をしやすい投球フォーム」という昔の記事に、してはいけないテイクバックの形である、Inverted W、Inverted L、等の説明があります。
 その他、関連記事をあわせて見ていただければ、理解が深まると思います。
投球フォームと腕の痛みとの関係
腕の遅れと故障(中日、吉見一起投手の投球フォーム)
究極の投球フォームについて考える

 私の昔の記事をいまだに多くの方が閲覧されているようなので、誤解を与えないようにこの記事を投稿することにしました。
 「大リーグで主流の投球フォーム」という記事が最も読まれていますが、その主流と言う言葉の中にトミー・ジョン・シンドロームの原因が隠れているかもしれません。
 昔に比べて、大リーグでは球速がアップしていますが、それに伴って肘の靭帯断裂という故障も増えています。登板過多も原因のひとつかもしれませんが、根本的な問題は投球メカニクスが怪我をしにくい昔のタイプから、大きく変わってしまったからでしょう。伝統的な昔の投球メカニクスの良い点を理解せずに、良い成績を残した投手の投球メカニクスの形だけ真似をしているのが、シンドロームの原因だと思います。
 大リーグでは体幹部の横回転を重視した投球フォームが主流になっていますが、それに伴い、体を開かない、縦回転が不十分といった弊害を生んでいます。投球の際は縦回転を意識して、腕は振らないようにしないといけません。腕のテイクバックの形がよくて、肩関節がスムースにホームプレートに向けて加速(はじめに縦、次に横と曲線を描く)すれば怪我はしにくいと思います。

 2013年にニューヨーク・メッツのマット・ハービーMatt Harvey、ダイアモンド・バックスのパトリック・コルビンPatrick Corbin、2014年に、現在イチロー選手が所属する、マイアミ・マーリンズのホセ・フェルナンデスJosé Fernandezが靭帯断裂をしました。

マット・ハービー投手(2015年)
 投球フォームは手術前と変わらず。上体を垂直にしたまま、直線的にホームプレート方向に、重心移動し、前足を着地した後、上体は急に横回転している。テイクバックはオーソドックスだが、右肩関節の軌道は水平回転し、前腕が水平に倒れるまでに肘の靭帯に無理な力がかかっているようです。フォーシームの平均球速が95マイルもあるので予想以上に無理な力が靭帯にかかるようです。
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ロイヤルズ、ティム・コリンズ投手(身長は165センチ位だそうです)
投球フォームがInverted Wに近い
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 ダルビッシュ、マー君に関しては投球側の腕の形がL字になっていて、大丈夫か以前から気になっていた部分です。フォーム的にはマー君の方が肘の位置が高く、怪我に繋がりやすいフォームだという印象を持っていました。恐れていたことが現実になってしまい残念です。

 結局、日本人大リーガー先発投手で怪我とは無縁だったのは現在、広島カープで活躍している黒田投手だけです。黒田投手の投球メカニクス(投球フォームという言葉は誤解を生みやすい:動作の結果、形ができるので)が問題を解決するヒントになります。

 先日、ジェイソン・バルガスJason Vargasという左腕投手(現在ロイヤルズ所属、以前マリナーズ、エンゼルスにもいた)が肘の靭帯断裂したというニュースを目にしました。彼は現在32歳で、速球派ではありません。良いチェンジアップを投げる投手なので記憶していました。速球の球速が平均86マイルですから、技巧派投手なのですが、それでも怪我をするのかと驚いてしまいました。

 ロイヤルズの投手では、大リーグでも最も小さい投手らしい左腕ティム・コリンズTim Collinsも2015年3月に肘の靭帯断裂をしたそうです。

 ヤンキース、田中投手が肘の靭帯を部分断裂した要因

右肘の位置が高すぎる
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ヤンキース、田中投手の投球動作
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 テイクバックのときの右肘の位置が高すぎることが、アメリカでも指摘されています。本人にもそのことは指摘されたということですが、今のところ投球フォームに変化は見られません。
 大リーグでは、この数年、肘の靭帯断裂でトミー・ジョン手術を受ける投手が急増していますが、そのうちの半数の投手で、投球側の肘の位置が高いことが指摘されています。藤川球児投手もそうでした。過去に何度か記事にしましたが、Inverted Wがその代表で、日本の投手にも広がっていてまさしくシンドローム(症候群)です。Inverted Lタイプも日本で多く見られます。

 テイクバックの時、肘の高さが両肩を結んだ線よりも高くなくても、ダルビッシュ投手のように肘がL字のように曲がっている場合にも、肘には大きな負荷がかかるようです。肘の構造上、ソフトボールのような投げ方以外は、投球時にどうしても小指側(ホームプレート側)の肘の靭帯が伸ばされてしまいます。
下の図は、肘の尺骨側(小指側)の靭帯UCLが引き伸ばされる様子です。

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レンジャーズ、ダルビッシュ投手
前足を着地した際、まだ投球側の前腕が垂直になっていない。

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 楽天の釜田投手は肘の手術から復帰したようですが、その投球フォームは田中投手と非常に似ていて、田中投手は大丈夫かと当時思ったものです。釜田投手の甲子園大会での投球フォームを見ると、すでに現在のフォームと同じでした。また、田中投手の甲子園での投球フォームを見直すと、現在と大きくは違っていません。投球側の肘の位置がすでに高かったのです。

「訂正」動画が間違っていました。
釜田投手の動画がオリックス金子投手の動画になっていました。
楽天、釜田投手2012年

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オリックス、金子千尋投手
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 ダルビッシュ投手の怪我のほうがどちらかと言えば驚きです。ダルビッシュ投手のほうが肘の位置が低いからです。日本ハムの大谷投手、斉藤投手、新人の有原 航平投手の投球フォームは全て、よく似ていてダルビッシュ投手のコピーのようであり、将来が不安です。

 日本ハムの投手陣の投球フォームはダルビッシュ投手に似ています。大リーグで中4日では、とても投げれそうにありません。中6日は必要でしょう。

大谷翔平投手(2015年4月)
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有原航平投手(2015年)
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斎藤佑樹投手(2014年)
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 黒田投手のように、昔から行われているように肘が円を描くようなテイクバックでは肘にも、肩にも負荷がかかりにくく故障が少ないということが言えます。
黒田投手の投球動作

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 元広島カープの北別府学投手(通算213勝、141敗、勝率.602、沢村賞2回)は球速は最速で144キロ程度で、速球投手ではありませんでしたが、「精密機械}と言われるほど制球の良い投手でした。投球フォームも非常に美しく、肩に無駄な力がまったくかかっていません。肘にも無駄な力がかかっているように見えません。黒田投手も40歳まで怪我をしたというのを聞いたことがないので、北別府投手のように無駄な力が肩、肘にかかっていないことを証明したと言えます。日本の投手(アマ、プロを問わず)も参考にしてほしいと思います。
元広島カープ、北別府学投手

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元広島カープ、炎のストッパー、速球投手、津田恒美
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 日本の速球派の投手は一体どの投手を手本にしているのだろうか?

 ノーラン・ライアンを手本にしたのだろうかとまず思ってしまいます。日本人投手で、重心を極端に落とす人が多いのはトム・シーバーの影響が大きいのでしょうか。ノーラン・ライアンの投球フォームで頭に浮かぶのは、ヤクルトのライアン・小川投手のように足を高く上げ、右肘を完全に伸ばさずに曲げて投げるフォームです。ただし、小川投手の投球メカニクスは、足を高く上げる最初の部分を除き、まったく違う投球メカニクスです。
 小川投手が真似しているのは、ノーラン・ライアンがテキサス・レンジャーズに移籍してからの投球フォームであり、デビュー当時(ニューヨーク・メッツ)は極端に足を高くは上げていませんでした。右腕のテイクバックも黒田投手のようにオーソドックスな形でした。しかし、上体を急激に水平になるまで倒していたためか、コントロールは悪く、また肘の靭帯を断裂したそうです。その後、ノーラン・ライアンは投球フォームの改造をしています。カリフォルニア・エンゼルス時代が成績が一番よく、この時の投球フォームは怪我をしにくいフォームのように思えます。テイクバックもオーソドックスです。
 制球に関してはレンジャーズ時代のほうが良いかも知れませんが、怪我をしにくい投球フォームとしてはエンゼルス時代のほうが良いと思います。ノーラン・ライアンは46歳まで投げて、最後は靭帯が切れて引退しました。デビュー当時からレンジャーズ時代のような投球フォームを続けていたとしたら、40歳代まで投げられたかはよくわかりません。

 ノーラン・ライアンのレンジャース時代の投球フォームを真似しないほうが良い

 レンジャース時代のノーラン・ライアンの投球フォームのテイクバックの形だけ真似して、腕を振るように150キロ近くの球を投げると、肘を怪我する可能性が非常に高くなると思います。

ノーラン・ライアン(ニューヨーク・メッツ:大リーグデビュー当時)

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ノーラン・ライアン(エンゼルス時代、1979)
一番成績が良かったときのフォーム
手本にしても問題のないフォーム

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ノーラン・ライアン(テキサス・レンジャーズ:ライアン晩年40歳台)
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 ノーラン・ライアンはテイクバックで肘を完全に伸ばさず、直角に曲げ地面に垂直よりもすこし起こして、前腕が3塁側に向くような形になっています。しかし、前足を着地したときには、投球側の前腕は基本に忠実で、オーソドックスであり、地面に垂直になっています。また、この腕の形を維持したまま、腕を振るのではなく、そのまま上体を水平になるように倒すことで、結果として腕が速く動いているために、長く怪我をせずに投げてこれたのではないかと思います。
 ノーラン・ライアンの投球フォームの、投球メカニクス(投球動作)を理解せず、テイクバックの形だけ真似している投手が、大リーグだけでなく、日本のプロ野球、高校野球の投手にも多いのが、トミー・ジョン・シンドロームの原因の一つかもしれません。


 前足を着地して、右肩が地面に垂直な面内で縦回転していることが重要なポイントだと思います。

 前足を着地して、右肩が地面と平行な面内で急激に横回転すると危険。
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 先に挙げた、マット・ハービーMatt Harvey、パトリック・コルビンPatrick Corbin、ジェイソン・バルガスJason Vargas、といったオーソドックスなテイクバックをしているにもかかわらず、肘の靭帯を断裂してしまう謎の原因に違いないと思います。

 こうなると、投球側の前腕が2塁側に急激に倒れ、肘の尺骨側(小指側)の靭帯UCLが急激に伸ばされ、靭帯に障害が起き、最悪、完全断裂することになります。微小な障害が積み重なると、部分断裂、完全断裂へと進行して行きます。
 前足を着地したときに、投球側の前腕がまだ垂直にならず、タイミングが遅れると、靭帯UCLを怪我する確立が高くなります。Inverted W,Inverted L,Inverted Vといった投球フォームをしていると、このようにタイミングが遅れます。ダルビッシュ投手もそうなっています。ダルビッシュ投手はInverted Lに近い形です。肩甲骨はあまり背中側に引いていないので、完全なInverted Lではないかもしれません。

結論

 怪我をしないで、速い球を投げるポイント

 ①昔の投手が行っていたように、体幹部は最初から、緩やかに横回転、縦回転を行う。(回転慣性を与える)
 その結果、体幹部だけでなく、投球側の腕にも運動量が与えられる。体幹部はホームプレート方向に平行移動するのではなく、いかに速く倒れるかが重要です(縦回転)。グラブ側の脚を高く上げたときに背中がキャッチャーから見えるようにする(横回転)。
 ②腕は振らない
 腕は振らなくても、テイクバックの腕の位置がよければ、肩関節がホームプレートに向けてスムースに加速するだけで、腕は速く回転します。

 ③前足を着地してからは、投球側の肩関節が地面に垂直な平面内を縦回転することを意識する。
 その後、肩関節は水平に回転しても安全です。前足の着地から少し時間が経つと、投球側の肘関節の曲がりが小さくなるからです。
 

楽天、安楽投手
早くフォームを修正しなければ危険です。

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藤川球児投手(Inverted W)
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屋根裏のオールドギター

 趣味はギターの弾き語り(下手です!)。
 好きな英語の歌の歌詞を理解したくて英語の勉強をまた始めましたが、メジャーリーグの日本人選手の活躍を、MLBのニュースで見るのが楽しみの一つになりました。英語だけでなく、スペイン語のサイトもみるようになりました。大リーグのサイトは英語とスペイン語の学習に役立ちます。

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Author:屋根裏のオールドギター
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